足底筋膜炎とは
足底筋膜炎とは、『足裏の指の付け根からかかとをつなぐ扇形に広がった薄い腱が傷つき炎症を起こしている』状態の事です。
主に痛みが発生するのは、指から伸びた筋膜が集中するかかとの少し前の部分。
一度発症すると、再発を繰り返すことが多く、治療には時間がかかると言われています。
日常生活に支障をきたす症状
軽度の場合は、歩き初めると足裏にピリピリとした痛みを感じますが、徐々にその痛みが消えていくのが特徴です。
他にも『朝、起きた後の一歩目が一番痛い』。『しばらく座った後、立ち上がった一歩目が痛い』という症状も、多くの場合に共通した特徴と言えるでしょう。
しかし、このまま症状をごまかし慢性化すると、最終的には『足を地面に付けただけで痛みだし、歩く事はおろか、日常生活もままならない』状況にまで追い込まれることもあります。
足底筋膜炎になる原因
足は、土踏まずを中心としてアーチを形成しています。 歩く時は、このアーチがつぶれる事によって地面からの衝撃を吸収するクッションとなっています。
足底筋膜はアーチを作る生命線
炎症をおこす足底筋膜とは、『アーチを作る端っこのかかとと指の付け根をつないでいる腱』であり、この筋膜が足を絞る事によって、ちょうど弓を引き絞る弦のように、足のアーチを作っています。
足底筋膜は伸縮の度にダメージを負う
歩くたびに、アーチは潰れますが、その時の衝撃は足底筋膜が伸びる事で吸収しています。
そして足が離れると筋膜は縮み、またアーチを形成します。
足底筋膜は、まるでゴムのように伸縮を繰り返すことで、体にかかる負担を軽減しています。
しかし、1本のゴムを何度も伸び縮みさせていればいつか切れてしまうように、一歩踏み出すたびに足底筋膜にはダメージが蓄積されていきます。 そして耐え切れなくなった時に、足底筋膜に傷がつき、炎症を起こすことになります。
健康ブームで一般にも広がっている
元々はランナーなど、足を酷使するアスリートに多い病気でしたが、健康ブームでランニングをする人が増えたことで、一般にも症状が広がっています。
足底筋膜炎の予防法
通常、足底筋膜には十分な伸縮性があります。
しかし疲労や緊張などにより、その柔軟性が失われると足底筋膜炎を発症しやすくなります。
ランニングの前には十分なストレッチを忘れずに
準備運動なしで走り始めてアキレス腱を切るという話を聞いた事はありませんか?
足底筋膜も同じで、ストレッチをしないと傷める原因になります。
特にランニング時は、足にかかる衝撃も強く、蹴りだす際には親指を反らす為に、通常より筋膜を伸ばしていると考えられます。
その為、柔軟をしない筋膜には受け止めきれないダメージがかかる事が予想できます。
また、『起きた直後の一歩』や『休んだ後の一歩』が痛いのは、寝ている間に筋膜が収縮し固くなっている事が原因と考えられます。
その後、歩いているうちに、足底筋膜がほぐれてくるので、痛みが徐々にやわらいでいくという訳です。
親指を反らすストレッチ
足底筋膜を伸ばすには、足の親指を反らすのが効果的です。
やり方は、『ストレッチをする足の親指を、対角線上の手(左足なら右手)でつかみ、ゆっくりと上に反らす』だけです。
注意点としては、『伸ばす時はゆっくり』、『痛い所までやらない』、『1回30秒を目安に』。
勢いよく伸ばしたり、痛みを我慢してまでストレッチを行うと、逆に筋膜を傷つける可能性があります。
アスファルトの上を走る時は、適度に休憩を入れる
アスファルトは固く、反発性が強いので、それだけ強い衝撃を受けてしまいます。
目安としては30分に一度は休憩をいれ、こわばった足底筋膜をほぐしてあげるのが良いでしょう。
靴を見直す
広告に釣られて軽い上級者向けのランニングシューズを履くのは危険です。
ランニング時、地面から受ける衝撃は3倍~5倍と言われています。
上級者はそれだけの衝撃に耐える走り方と筋肉を持っているので、薄いソールの靴でも問題はありません。しかし十分な準備のできていない状態では足底筋膜炎になる危険が増すでしょう。
足底筋膜炎に効果的な治療はない
病院などでは、アイシングで炎症を抑えたり、テーピングを行う事で一時的に痛みを和らげることがあります。しかし、それらは対処療法であり、根本的な治療ではありません。
アスリートがそうやって痛みをごまかしたまま練習を続け、慢性化させてしまう例もあります。
症状が出ないからといって、決して完治したわけではありません。
足底筋膜炎は治癒するまで時間がかかる
足底筋膜炎は、筋膜が傷つき炎症が起きる事で痛む病気です。基本的には安静にし、自然治癒を待つ以外に方法はありません。
完治までには、自然治癒で3ヶ月から3年ほどの長い時間が必要とされます。
外科手術の効果は不明
足底筋膜炎を起こした人のかかとには、突起状の骨が確認できることがあり、昔はこの骨が筋膜を刺激する事で痛むのではないかと考えられていました。
しかし、痛む箇所と骨の位置が違う事や、そもそも突起が無くても痛みはある事から、最近では関係がないとするのが主流の考えです。
また足底筋膜を切り離す外科手術を行う事で治癒する事もあります。
その場合でも3か月以上の入院が必要になりますし、アスリートにとっては選手生命を失いかねない大手術です。
常識を変える『体外衝撃波疼痛治療』の可能性
そんな中、尿路結石の治療に用いられる体外衝撃波疼痛治療を患部に照射する事で、多くの患者の症状が軽くなったという報告がなされています。
ただ、『なぜ痛みが無くなったのか』という理由に対して、明確な答えは出ていません。
しかし、実際に効果があるのならば、症状に苦しむ全国の患者の希望となるかもしれません。